行動の意味

【自閉症×知的障がい】「たった一度」がこだわりになるのはなぜ?:元看護師ママが伝える「しんどい」から「寄り添う」に近づく4つの視点

「良かれと思って経験させたのに、それが毎回のルールになってしまった」
「対象から離しても、また同じことを繰り返す」
「制止しようとすると、激しい癇癪になる」

そう感じることはありませんか。

まずお伝えしたいのは、
それはあなたのせいではない、ということです。

今日も本当にお疲れさまです、あすかです。
元看護師・4歳の自閉症×知的障がい娘の当事者ママです。

娘には、こんな姿があります。

  • 同シリーズの別の絵本でも、初回のセリフを再現しようとする
  • 気持ちが不安定になると、決まって台所か洗面所の水遊び(水流し)に向かう
  • 「バイバイ」の場面で「おやすみ」と言い続けていた(3歳の頃)

この記事を読むと:

  • なぜ「たった一度」の経験がこだわりになるのか、4つの視点で理解できる
  • 「わがまま」ではなく「必死に安心を守っている姿」として見られるようになる

お子さまの行動には、
意思や性格だけでは説明できない「脳の働き方」という背景があります。
関わり方で変えられることはありますが、
まずはその背景を知ることが、出発点になります。

それは、強いこだわり真っ最中のお子さまを前に、
“寄り添う”心の余白につながるからです。

この記事が、少しでもあなたのお役に立てれば嬉しいです。

※この記事の内容は、娘が「4歳0ヶ月」時点のものです。(娘の特性と当時の発達状況に基づいた内容になっています)


こだわりはわがままではない——“理由”を知ることが出発点

こだわりの正体は、
「安心を取り戻すための方法として学習されたパターン」です。

一度「これで大丈夫だった」という経験は、
お子さまの脳の中で
「安心のルール」として刻まれます。

そして同じ状況になると、
そのルールを繰り返すことで、
不安定な感覚や見通しのなさから、
自分を守ろうとしているのです。

だからこそ関わりのゴールは、
こだわりを「なくす」ことではありません。

今ある安心のかたちを大切にしながら、少しずつ
「こういう終わり方もある」
「こういう楽しみ方もある」
という経験を重ねていくことで、
新しい安心のパターン——柔軟性が育っていきます。

では、
「たった一度」の経験が、
なぜこれほど強い「安心のルール」になってしまうのでしょうか。
その仕組みを、4つの視点で見ていきましょう。

※4つの視点の全体像は、
看板記事前編の「ASDの特性とは?4つの脳機能で整理する」でお伝えしています。


なぜ「一度の経験」がこだわりになる?——4つの視点で理解する

自閉症(ASD)× 知的障がい(ID)のお子さまは、
新しい経験が「その場限り」で終わらず、
その後の行動の「基準」として残りやすい傾向があります。

それは、脳に「安心パターン」ができやすいからです。

一度「安心できた」「混乱せずに終われた」
と感じた場面が、まるごと記憶に保存され、
似た状況や似た気持ちになったとき、
自動的に再生されていきます。

一方で、「怖かった」「嫌だった」
という場面も同じように残り、
似た状況や似た気持ちになったとき、
同じように自動的に再生され、
切り替えが難しくなったり、
「絶対いや」という回避パターンになることもあります。

この仕組み自体は、どのお子さまにも共通する自然な脳の働きです。
ただASD×IDのお子さまは、
そのパターンがより強く固定されやすく、
更新されにくいという特性があります。

裏を返せば、
「安心できた」という経験も、
同じように強く残りやすいということです。

だからこそ、ASD×IDのお子さまでは特に、
安心できた経験をひとつずつ積み重ねていくことが大切になります。
その積み重ねの中で、
今の安心パターンは、少しずつ新しいパターンへと更新されていきます。

では、なぜこの「安心パターン」ができやすいのか。4つの視点から見ていきます。

【視点①】「感覚+場面」がセットで記憶される

関わる脳機能:感覚処理ネットワーク

ASD×IDのお子さまは、
感覚の感じ方がその時の状況や日によって
「昨日は音に過敏だったのに、今日は音に鈍感」
など、大きくブレやすい傾向があります。
まるで「激しくゆらぐシーソー」のような状態です。

だからこそ、
感覚負荷が安定しやすく、自分のコントロールしやすい刺激や行動に
しがみつきやすくなります。

新しい場面の中に「とても心地よい感覚」を見つけたとき、
その感覚と場面が強く結びつき、
安心パターンとして保存されやすくなります。

🍀 娘の例:どの公園でも、自転車の鍵を片っ端から触っていく(1.2歳時ピーク)
娘にとって、公園の遊具の騒がしさや人の動きは感覚的に負担でした。
一方で、自転車の鍵には、冷たい金属感とカチカチ音という、自分のコントロールしやすい感覚があったのでしょう。
その「落ち着く」感覚と「公園の場面」がセットで記憶に残り、安心パターンとして定着したのです。

【視点②】「一度うまくいった流れ」が「正解」になる

関わる脳機能:予測ネットワーク

ASD×IDのお子さまは
「次に何が起きるか想像すること」が苦手で、
新しい場面は常にサプライズにさらされるような緊張状態になりやすいです。

だからこそ
「毎回ほぼ同じ結果が返ってくる」小さな世界が見つかると、
そこが圧倒的に安全な場所になります。

そして、一度うまくいった流れは
「次も同じであるべきもの」として強く固定されます。

🍀 娘の例:絵本のセリフ指定
「のりものはてなえほん」を初めて読んだときのセリフ・読み方・ページをめくるタイミングが固定化。同シリーズの別の絵本でも初回のセリフで進めようとし、正しいセリフで読むと癇癪に。「この流れで混乱せず終われた」が脳に強く刻まれていたのです。

【視点③】やめたくても、止められない

関わる脳機能:抑制ネットワーク

ASD×IDのお子さまは、
始まった行動にブレーキをかけたり、
別のやり方に切り替えたりする機能が弱いため、
行動が止まりにくくなります。
背景には「①感覚のゆらぎ」や「②予測の弱さ」も関係しています。

親からすると「たまたまその日だけ水遊びを多めにさせた」程度でも、
本人の脳には「このやり方=安心が戻った」という強い記憶+ブレーキの効きにくさが重なり、同じパターンが繰り返されます。

「わざとやめない」のではなく、「止められない状態」になっているのです。

🍀 娘の例:水遊び(水流し)が止まらない
以前は、公園に行くと水飲み場に一直線でした。家では今でも、気持ちが不安定になると洗面所や台所に一直線。
蛇口をひねり、勢いよく流れてくる水を見て喜んでいます。
そうすることで、必死に安心に戻ろうとしているのです。

【視点④】「人の言葉」より「パターン行動」が優先される

関わる脳機能:社会脳ネットワーク

定型発達のお子さまは
「お母さんが笑っているから大丈夫」
「先生が『今日はここまで』と言ったからおしまい」
と、人との関わりから安心と区切りをもらいます。

一方でASD×IDのお子さまは、
人の意図や表情を読み取る脳の働きが弱いため、
「人の言葉」より「物や行動」のほうが脳に入りやすく、
大人の声かけより「自分で見つけた安心パターン」のほうがずっと頼りになります。

🍀 娘の例:幼稚園で「バイバイ」ではなく「おやすみ」と言う(3歳時)
家で「パパの部屋に行っておやすみを言ってから寝室に戻る」を習慣にしていたところ、幼稚園で帰り際に先生へ「おやすみ」と言うように。先生に「バイバイ」で返されても、「おやすみ!」と長い間返していました。
先生の言葉より、「この場面はおやすみ」という自分のパターンのほうが、ずっと確かな手がかりだったのです。


このように、4つの視点がそれぞれ独立してではなく重なり合うことで、
「一度の経験が毎回になる」という強い安心パターンが作られています。

  • 感覚と場面がセットで記憶され(①感覚処理)
  • 一度成立した流れが予測として固定され(②予測)
  • 止めることや切り替えることが難しく(③抑制)
  • 人の言葉で調整することが難しい(④社会脳)

これが、「たった一度」の経験が、こだわりへと育っていく理由です。

また、安心パターンは、一緒にいる人によっても変わります。
娘の場合、同じスーパーでも「パパといると要求が少なく、ママといると要求が激しい」という違いがあります。

これはパパ・ママそれぞれとの場面で、
別の安心パターンが保存されているからです。
親によって見せる姿が違うのも、脳の特性としては自然なことです。
この違いは、実は関わり方を考える上でも活かせるヒントになります。


こだわりの「柔軟性」を育てるには?

理由が分かると、次に気になるのは「じゃあ、どう関わればいいのか」だと思います。
ここからは、安心パターンの更新——こだわりの柔軟性を育てる、実践のエッセンスをご紹介します。

まず大切な前提は——

否定せず受け入れる
「止められない」ことを責めず、その背景にある「安心を求めているサイン」と捉えます。
それだけで、こちらの表情や声のトーンが自然とやわらかくなり、それ自体がお子さまにとって最初の安心材料になります。

そのうえで、4つの方法をご紹介します。

1️⃣ 安心環境を整える(視点①)
その日の感覚疲労やその場の刺激量を見ながら、高負荷にならない環境に整えることで、お子さまの安心を守り、落ち着いて過ごせる成功体験を積み重ねます。

2️⃣ 見通しを届ける(視点②)
見通しによって安心する(落ち着く)ことで、パニック回避や切り替えの成功体験を積み重ねます。

3️⃣ 安全な代替を用意する(視点③)
お子さまの感覚を満たす代替活動/アイテムを使うことで、癇癪/パニックを防ぎながら切り替えられた成功体験を積み重ねます。

4️⃣ 一緒に喜ぶ(視点④)
1️⃣〜3️⃣の成功体験を、お子さまの好みのご褒美とセットで一緒に喜びます。
この積み重ねが、安心パターンの更新——こだわりの柔軟性を育てていきます。

▶ それぞれの具体的な工夫や娘の実例は、こちらでたっぷりご紹介しています。
【自閉症×知的障がい】こだわりの「柔軟性」を育てる4つの方法:「成功体験」を積み重ねる、元看護師ママの実践


こだわりはこの先どう変わっていくの?:娘の例

今あるこだわりや表出の仕方は、
脳の成長と日々の関わりを重ねる中で、
少しずつ変わっていきます。

🍀 娘の例
・スマホの接触を断って1ヶ月半——スマホを目の前に手を伸ばすこともなくなった
・公園での鍵・水飲み場への執着は、今は見られなくなった。水飲み場を前に、自分の指でバツマークをしながら「ダメー」と自分でブレーキをかけられるように
・「バイバイ」のシチュエーションで「おやすみ」と言わなくなった

その渦中にいる時は、
「いつまでこれが続くんだ……」
という、先の見えない気持ちでしたが——
なぜこうした変化が起こるのか、
その理由を「大事な視点」でお伝えします。


大事な視点:それでも、お子さまの脳は育ち続けている

今回ご紹介した4つの視点のうち、
予測・抑制・社会脳ネットワークの3つは、脳の「前頭葉」というエリアに深く関わっています。

🌱前頭葉は、20代までゆっくり成熟していきます。
お子さまの前頭葉という「お部屋」自体が、
20代まで長い時間をかけ大きく作られていきます。
また、それぞれのネットワークを安心した関わりの中で使っていくことでも、成熟を後押ししていきます。

🌱よく使うネットワークほど、太く育っていきます。
最初は「細い砂利道」のような状態から、
よく使う道路ほど「太く見通しの良い高速道路」に変わっていきます。
今あるこだわりや表出の仕方も、この成長とともに、少しずつ変わっていきます。

この“育ち続ける力”にこそ、希望があります。

※脳の育ち方や変化の現れ方には、大きな個人差があります。
「お子さまなりのペースでゆっくり進んでいくもの」として受け止めてみてくださいね。


まとめ:「たった一度」がこだわりになるのはなぜ?

こだわりの正体は、
「安心を取り戻すための方法として学習されたパターン」です。

「たった一度」の経験が、なぜここまで強いパターンになるのか。
その理由を4つの視点でまとめます。

  • 【視点①】感覚と場面がセットで記憶され、安心パターンとして定着する(感覚処理ネットワークの不安定さ)
  • 【視点②】一度うまくいった流れが「次も同じであるべきもの」として固定される(予測ネットワークの働きの弱さ)
  • 【視点③】始まった行動にブレーキをかけることが難しい(抑制ネットワークの働きの弱さ)
  • 【視点④】人の言葉より、自分で見つけた安心パターンの方が脳に届きやすい(社会脳ネットワークの働きの弱さ)

こだわりを「なくす」のではなく、
否定せず受け入れながら、安心できる経験をひとつずつ積み重ねていくことで、
新しい安心のパターン——柔軟性が、少しずつ育っていきます。


読んでくださったあなたへ

「たった一度の経験がこだわりになった」——
私含め親御さんにとって、本当にエネルギーを奪われることだと思います。

でも、こだわりは、
なくすべき「困った行動」ではなく、
お子さまが必死に安心を守ろうとしている証です。

そう見方が変わるだけで、
今日の「しんどい」が、少しだけ軽くなる。

そうやって、少しずつ「寄り添う」景色が広がっていきますように✨️

子育ては本当に長期戦ですから⋯
「ぼちぼち」やっていきましょう☕

親子の優しい時間が、
毎日の中にそっと生まれますように🌈


ブログを書いている背景や想いはこちら
👉 あすかのプロフィール


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ABOUT ME
あすか
知的障がいを伴う自閉症の娘(4歳)を育てる、元看護師・当事者ママです。 1歳9ヶ月から療育を開始し、8ヶ所の療育機関を経験。娘の行動に「脳機能の視点」を持つようになってから、しんどさの中に少しの余裕が生まれました。 このブログでは、娘の実例をもとに「行動の意味と関わり方」を分かりやすくお伝えしています。 親子の優しい時間が、毎日の中にそっと生まれますように🌈