※この記事の内容は、娘が「3歳10ヶ月」時点のものです。
(娘の特性と当時の発達状況に基づいた内容になっています)
スマホ依存は意志の問題ではない——”理由”を知ることが出発点
「スマホが視界に入った瞬間、表情が変わり、奪いに来る」
「終わりにしようとすると、激しい癇癪になる」
「たった一度見せただけで、こだわりになってしまった」
そう感じて、疲れ果てていませんか。
私もその一人です。
今日も本当にお疲れさまです、あすかです。
元看護師・3歳の自閉症×知的障がい娘の当事者ママです。
この記事を読むと:
- 4つの視点で、動画/スマホ依存に“なるべくしてなっている”理由を理解できる
- パニックを起こすお子さまに「そうなるよね、がんばってるね、がんばったね」と思えるようになる
スマホ依存は意志や性格だけでは説明できない、“脳の特性”という背景があります。
関わり方で変えられることはありますが、まずはその背景を知ることが、出発点になります。
それは、パニックを起こしているお子さまを前に、“寄り添う”心の余白につながるからです。
この記事が、少しでもあなたのお役に立てれば嬉しいです。
※ここでは主に、スマホ・パソコンを通じた動画への依存についてのお話です。
※4つの視点の全体像はこちらの看板記事でお伝えしています。
なぜ、スマホは依存性が強い?——4つの視点で理解する
「イライラ」から「寄り添う」に近づく——
その第一歩は、行動の裏にある“なぜ”を知ることです。
スマホへの衝動的な行動(奪う・パニックなど)は、4つの神経ネットワークが絡み合って起きています。
“一つの行動に複数の理由がある”という視点が大切です。
【視点①】強い刺激への“感覚探求”
関わる脳機能:感覚処理ネットワークの不安定さ
自閉症のお子さまは、
感覚の受け取り方に「ゆらぎ」があります。
過敏さと鈍さが、環境や体調、そのときの状況によって入れ替わるなど、
刺激の感じ方が安定しません。
感覚の受け取り方が不安定だと、
脳が落ち着きにくく、
何かが足りないように感じやすくなります。
そのため、強い刺激を求めたり、
不快な感覚やストレスを打ち消そうとして刺激を使ったりすることがあります。
このような行動を「感覚探求」といいます。
娘にとって、
動画の鮮やかな色や目まぐるしい動き、
そして「次に何が起こるか分かる」という安心感、
自分で操作できる感覚は、
脳を落ち着かせるのに役立つ強い刺激です。
同じ動画を何度も見ることも、安心につながる大切な要素になっています。
衝動的にスマホを奪おうとする姿は、
“わがまま”ではなく、
強い不安や落ち着かなさを和らげようとする切実な自己調整です。
【視点②】“こだわり”化とパニック
関わる脳機能:予測ネットワークの働きの弱さ
スマホの動画は、強い刺激であると同時に、
「次に何が起こるか分かる」
予測しやすく安心な存在でもあります。
そのため、一度スマホで「楽しい」「落ち着く」という感覚を覚えると、
お子さまの脳の中では
「これをすれば安心できる」という形で、
ひとつの決まったやり方として残りやすくなります。
これが、いわゆる「こだわり」の土台になります。
でも、予測ネットワークの働きが弱いと、
「いつも通り」が崩れたときに、気持ちを切り替えるのがとても難しくなります。
たとえば、
・いつも見ている動画が見られない
・触れるはずのスマホが急に使えない
そんな場面では、
「どうなるか分からない」という不安が一気にふくらみます。
そのとき子どもが感じているのは、
ただ「困った」だけではありません。
足もとの支えが急になくなったような、
強い不安です。
その不安が、
パニック(急な変化や不安、混乱で、怖さや切迫感が一気に高まっている状態)や
癇癪(「いやだ」「まだやりたい」など、主張が強く出る状態)という形で表れることがあります。
スマホを奪おうとしたり、
パニックや癇癪になるのは、
“予測できて安心な状態をもう一度取り戻そう”とする、切実な自己調整なのです。
【視点③】「見たい!」の衝動が行動に直結する
関わる脳機能:抑制ネットワークの働きの弱さ
視点②の「どうなるか分からない不安」が高まると、
「動画を見たい」「スマホに触りたい」という気持ちも一気に強くなります。
本来であれば、
抑制ネットワークがブレーキをかけ、
「言葉で伝える」や「待つ」といった行動に切り替わります。
でも、自閉症のお子さまは、
このブレーキをかける力がまだ弱いことがあり、
衝動をうまく止めることが難しくなります。
そのため、気持ちがそのまま“奪う”という行動につながりやすくなります。
また、この行動には、
高まったエネルギーを外に出して、
自分の状態を保とうとする意味もあります。
いわば、爆発してしまう前に、衝動を外へ出している状態です。
スマホを奪う行動は、
抑えきれない衝動や不安を、
なんとか落ち着かせようとする切実な自己調整です。
※知的障がいが重なる場合は、
状況の理解の難しさや、先の見通しの持ちにくさも加わるため、
不安や衝動がさらに強くなりやすくなります。
※今は衝動が強くても、抑制にかかわる前頭葉の発達は、20代半ばまで続きます。
【視点④】人の言葉より、動画/スマホの刺激が入りやすい
関わる脳機能:社会脳ネットワークの働きの弱さ
ここまで見てきたように、
お子さまの中では、動画やスマホが
①脳を落ち着かせる強い刺激となり、
②次に何が起こるか予測しやすい安心感となり、
③「もっと見たい」「触りたい」という衝動につながっています。
社会脳ネットワークは、
人の表情や気持ち、言葉の意味を読み取る脳の働きです。
この働きが弱いと、何度呼んでも反応がなかったり、制止の言葉が届きにくかったりします。
これは無視しているのではなく、
脳の中で「何を優先して処理するか」の順番が違っているためです。
人の言葉よりも、見てすぐ分かる刺激や、繰り返し経験してきた行動パターンのほうが、
安心につながりやすいのです。
※知的障がいが重なる場合は、
言葉の理解や状況の把握にさらに負荷がかかるため、
人の言葉より動画/スマホの刺激が入りやすい傾向が、より強くなります。
スマホ依存を減らす3つの方法
- 衝動の入口を閉じる(スマホ/パソコンを視界から排除する)——自己調整をサポートする
- 代替刺激(動画以外の落ち着く刺激)——自己調整の選択肢が増える
- “伝える・待つ・おしまい”で”抑制力”を使う経験を積む——自己調整に深く関わる“抑制力”が育つ
▶具体的な方法についてはこちら
【自閉症×知的障がい】動画・スマホ依存を減らす3つの方法:”成功体験”で”自己調整力”を育てる、元看護師ママの実践
スマホの代わりになるものは?:娘の例
娘にとって動画/スマホは、
自分ですぐに選びやすい自己調整の強力な選択肢です。
でも同じ「落ち着く」役割を果たせるものは、他にもいくつかあります。
娘が動画にパニック/癇癪になったとき、
大好きな三輪車に誘うとスムーズに切り替わることが多いです(親は大変ですが⋯)。
三輪車を漕ぐことで、脳が求めている感覚(固有覚・リズム)が満たされるのです。
ドーナツやキュウイなどの味覚刺激、抱っこグルグル(固有覚・前庭覚刺激)も、
切り替えに有効な場面が多くあります。
“衝動的な行動”は、
「今、私は不安定だから助けて!」というサインです。
大事な視点:それでも、お子さまの脳は、育ち続けている
前頭葉の抑制ネットワークや社会脳ネットワークは、20代半ばまで発達が続きます。
娘は3歳10ヶ月でスマホ・動画絶ちに挑戦し、
数ヶ月後には衝動性も要求もほぼなくなりました。
今は衝動的でも、
それは“未熟さ”であり“伸びしろ”です。
大変な今も、必ず変化していきます。
試行錯誤しながら、
共に一歩一歩、進んでいきましょう。
まとめ:スマホ依存はなぜ起きる?——4つの視点で整理する
スマホ依存にみられる奪う/パニック/癇癪などは、“わがまま”ではありません。
「自分を落ち着かせたい」「安心したい」という、お子さまなりの切実な自己調整です。
スマホ依存の「なぜ」を4つの視点でまとめます。
- 【視点①】脳を落ち着かせるために、スマホの強い刺激を使おうとする(感覚処理ネットワークの不安定さ)
- 【視点②】動画/スマホは「次に何が起こるか分かり」予測しやすいため、安心な存在となる(予測ネットワークの働きの弱さ)
- 【視点③】「見たい!触りたい!」の衝動に、ブレーキをかけることが難しい(抑制ネットワークの働きの弱さ)
- 【視点④】「人の言葉」より「動画/スマホの刺激」の方が予測しやすく、脳に届きやすい(社会脳ネットワークの働きの弱さ)
読んでくださったあなたへ
この記事を通して、
等身大のお子さまを
「そうだよね、がんばってるね、がんばったね👏」
と捉えてあげられるように、
そして、あなたの心が少しでも軽くなれば、嬉しいです。
親子の優しい時間が、
毎日の中にそっと生まれますように🌈
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