※この記事の内容は、娘が「4歳2ヶ月」時点のものです。
はじめに
「どうしていつもこうなるの?」
「どうしたら良いの?」
「私の関わり方が悪いのかな……」
知的障がいを伴う自閉症のわが子の行動に、
そのように感じることはありませんか。
この記事では、お子さまの行動を「4つの脳機能」の視点で捉え直す土台をお伝えします。
お子さまへの見方が変わると、
湧いてくる感情も、次の一手を考える余白も、
少しずつ変わってきます。
こんにちは、あすかです。
私には知的障がいを伴う自閉症の娘(4歳)がいます。
8つの療育機関や教育移住を経験しながら、
今は専業主婦として日々子育てに向き合っています。
保健師・看護師として学んだ知識と、母としての経験を重ねる中で、
ようやく「腑に落ちる理解」にたどり着きました。
その視点をここでお伝えしています。
ASD・IDって、何が違うの?
まず大前提として、自閉症(ASD)と知的障がい(ID)は、別の特性です。
ASD=脳の神経ネットワークの「偏り」
- よく働くところとそうでないところの差が大きい。
- 得意な道と苦手な道がはっきり分かれている。
ID=情報処理の「土台」が全体的に「小さく・ゆっくり」
- 処理できる量やスピードが小さく、
- 理解・記憶・応用のサイクルがゆっくりしている状態。
ASDがあっても知的な遅れがない子も多いし、
IDがあっても自閉症ではない子もいます。
でも、両方が重なると「困りごとの質」が大きく変わってきます。
「4つの脳機能」で見るASDの特性とは?
ASDの特性は、
脳の4つの神経ネットワークの「働き方の違い」として理解できます。
① 感覚処理ネットワーク「刺激の受け取りが不安定」
その日・状況によって過敏になったり鈍くなったりする「ゆらぎ」がある。
② 予測ネットワーク「次が分からない不安」
見通しが立てにくく、予定変更やイレギュラーに弱い。
③ 抑制ネットワーク「やめられない衝動」
「やりたい」を一旦止めたり切り替えたりすることが難しい。
※衝動が強く見えるが、背景には「①感覚のゆらぎ」や「②予測の弱さ」が関係している。
④ 社会脳ネットワーク「人とつながりにくい」
気持ち・表情・空気を読み取るネットワークの働きが弱い。
🍀この4つの中でも、①感覚処理が土台です。
感覚が安定することで、
②予測→③抑制→④社会脳へと、順番に働きやすくなっていきます。
🍀ASDの代表的な3つの特徴も、このネットワークで理解できます。
- 感覚過敏・鈍麻:
主に①感覚処理ネットワーク(②予測ネットワークも関係) - こだわり:
主に①感覚処理ネットワーク(不安定な感覚への自己防衛)②予測ネットワーク(先が見えない不安への自己防衛) - コミュニケーション障がい:
主に④社会脳ネットワーク(不安の背景に①②も関係)
感覚処理ネットワークを詳しく見る
感覚には2種類あります。
- 外側から来る感覚(意識しやすい):視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚
- 内側から来る感覚(無意識・コントロール困難):触覚・前庭覚・固有覚
前庭覚とは、体の傾きや揺れを感じる感覚です。
目をつぶって椅子に座り、ゆっくり体を傾けてから真ん中に戻るとき、
「元の位置」に戻ろうとする感覚が、それです。
固有覚とは、筋肉の張りや関節の角度・位置を感じる感覚です。
目をつぶって片腕を上げ、もう片方を「同じ高さ」に揃えようとするとき、
ピタッと揃う感覚が、それです。
感覚の「ゆらぎ」こそが、毎日同じ対応が効かない理由です。
その日によって、状況によって、反応が違う。こだわりの強弱も違う。
この「ゆらぎ」が、対応疲れの大きな原因になります。
「ゆらぎ」とこだわりの関係
常に揺れる船の上にいる感覚を想像してください。
酔わないために「動きのパターンを固定して、どこかにしがみつく」。
これが子どもたちにとっての「こだわり」です。
船員(親御さん)に行動の切り替えを促されても、しがみつくことに必死で、
声を聞いている心の余裕はありません。
まず船を止めること(感覚を整えること)が、その先につながる第一歩です。
感覚は、疲労や不安などのストレス時に過敏/鈍麻が強まりやすくなります。
娘の場合、幼稚園の長期休みや高負荷な一日の後は、頭を振る・ぴょんぴょん跳ねる
などの行動が増強します。
また、ストレスがかかると、こだわりも強く発動しやすくなります。
感覚は、成長とともに変化します。
娘の場合、幼稚園生活を通じて
帽子・マスク・髪留めへの強い抵抗が、「自分からつけたい」に変化しました。
スライムや粘土でも遊べるようになり、
偏食ですが給食はほぼ完食できるようになっています。
IDの特性とは?
「情報処理の土台」が全体的に「小さく・ゆっくり」という特徴がある
- 理解→記憶→応用のサイクルがゆっくり(脳全体で扱える「処理の容量」が小さい)
- 新しい情報を整理するのに時間がかかる
- ルールの意味を理解するまでに、細かいステップや繰り返しが必要
- 「理解しきれていないうちに場面が進んでしまう」が起こりやすい
周りのスピードについていけず、その結果、
不安→混乱→問題行動のように見えることがある。
でも根っこは「わからなさ」。
「強みの回路」がはっきりしていることも多い
IDがあっても、脳のすべての回路が弱いわけではありません。
「ここはつながりが良くて、ぐんぐん伸びる」という得意なルートがある子が多いです。
- 音やリズムをキャッチする回路が強くて、歌やダンスが得意
- 形や色を見分ける回路が強くて、パズルや積み木が得意
- 前庭覚・固有覚の回路が強くて、運動や水遊びが得意
その「得意な感覚の回路」を入口にすると、
言葉・社会性・学習など、他の力も一緒に引き上げていきやすくなります。
娘の場合、リズム、パズルが好きなので、関わりの入口となっています。
好きなことを続けていくうちに、
上達があり、それが自信になり、チャレンジ心につながっていることを実感しています。
ASD×IDが重なるとどうなる?
ASD単独でも感覚や見通しへの不安はあります。
そこにIDが重なると、さらに「何を言われているか分からない」が加わります。
- ASDの感覚不安定=「揺れる船の上にいる」感覚
- ASD×IDになると=「大揺れの船の上で、船員の言葉も分からない」状態
不安・恐怖がより大きくなり、
こだわり・癇癪・多動がより出やすくなります。
だからこそ、
「どう行動させるか」より前に
「どう安心して過ごせるか」を整える順番が大切になります。
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関わりの土台:「順番支援」という視点
船を止めてから声をかける。
この順番を意識するだけで、関わりが変わります。
① 感覚をまず整える(感覚処理ネットワーク)
→「安心基盤」を作る。
② 見通しを共有する(予測ネットワーク)
→「次が分かる」「終わりが分かる」と気持ちが落ち着く。
③「できた!」の成功体験を積む(抑制ネットワーク)
→①②が整うと、「やめる・切り替える」が効きやすくなる。
④「できたね!やったー!」の共有喜びを積む(社会脳ネットワーク)
→切り替えそのものが”いやなこと”ではなく、
“できた・うれしい・またやれそう”という経験として脳に残っていく。
※各ネットワークの具体的な関わり方については、後編でお伝えしています。
希望の話:前頭葉は20代まで成長し続ける
- 予測・抑制・社会脳を司る前頭葉は、10代にピークを迎えながら、20代まで成長し続けます。
- 4つの神経ネットワークは、よく使う経路ほど太く・安定していきます。
- お子さまは自分のペースで、「できること」を日々、少しずつ伸ばし続けていきます。
- 情報処理の土台も、その子のペースで「扱える量・スピード」が育っていきます。
おわりに
この記事が、お子さまの行動を理解するひとつのきっかけになれば嬉しいです。
特性を知った上で「どう関わるか」については、
後編でお伝えしています。
【自閉症×知的障がい】(後編)対応が変わる:
元看護師ママが伝える「順番支援」の軸と具体的方法
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