行動の意味

【自閉症×知的障がい】特性理解で行動の見え方はどう変わる?:元看護師ママが脳の視点で読み解く

「どうしていつもこうなるの?」
「一体どうしたら良いの?」
「私の関わり方が悪いのかな……」
知的障がいを伴う自閉症のわが子の行動に、
そのように感じることはありませんか。

今日も本当にお疲れさまです、あすかです。
元看護師・4歳の自閉症×知的障がい娘の当事者ママです。

娘の行動に「脳の視点」を持つようになってから、
育児のしんどさの中に、少しの心の余白が生まれました。

この記事では、
お子さまの行動の「なぜ」を理解するために必要な「特性」についてお伝えします。

「特性」がわかると:
わが子の行動の「なぜ」が考えられるようになる
→わが子を”がんばってるね”の目線で見られるようになる

行動の見え方が変わり、
親御さんの心の余白につながる。
そんなきっかけになれば嬉しいです。

特性がわかると、わが子の見え方はどう変わる?

以前の私は、娘の数々の行動に
「この子は〇〇しない・できない、いつまでも▢▢する」と感じ、
「娘だけの不可解な行動(にストレス)」と捉えている時期がありました。

しかし、
行動は「特性」から来ていることを意識してから、
娘の行動の見え方が、このように変化しました。

※感覚についての説明は、記事の後半【補足】にまとめています。

😔=以前の見方 🥰=今の見方

😔「おもちゃやタッチペンをいつも投げている。絵本を破りまくる。
本来の遊び方をしてくれなくて悲しい……」
🥰 乱暴なんじゃなくて、投げたり破ったりする衝撃で固有覚(感覚)を満たそうとしているのかも。自分の体の感覚を育てるために、必要なステップなんだね。

😔「常に動き回っている(落ち着きがない)、イライラする〜」
🥰 前庭覚・固有覚(感覚)が鈍くて、自分の体を感じるために、一生懸命動き回っているのかも。
🥰 加えて見通しが持てない&感覚がうまく処理できなくて「脳がキャパオーバー」になっている姿が、周りからは「多動」となって見えているのかも。

😔「公園に行っても遊具では遊ばず、ひたすらブランコだけ」
🥰 固有覚が鈍くて、大きな遊具は自分の体の位置が分かりにくくて怖いのかも。でも、本当はやってみたい気持ちもありそう。
🥰 大好きなブランコは、前庭覚をたくさん使うことで脳の成長につながるから、悲観しないで存分にやらせてあげたら良い。本人の安心にもつながるし。

😔「髪を触られることを極端に嫌がる」
🥰 頭皮の触覚(感覚)が過敏だから、髪を触られるのが「痛い」と感じるくらい不快でしょうがないのかも。

😔「全然話を聞いてない」
🥰 聞く気がないんじゃなくて、一度に入ってくる情報が多すぎて、脳が受け取りきれずにパンクしそうになっているのかも。

😔(療育の集団活動で癇癪で一人だけ参加できなかった娘に)「なぜ1人だけできないの、大声をあげないで……」
🥰 きっと前段でつまづいて、気持ちの切り替えが難しかったんだね。見通しもよく分からないまま、部屋から逃げ出さずによくがんばったね。

このような翻訳が、日々繰り広げられています。

わが子は”困った子”に見えていたけれど、
“困っている子”、”賢明にがんばっている子”
に変化しました。

これは、180度違って見える景色です。
娘の行動をこのように翻訳できるようになって、
私の心はだいぶ穏やかになりました。

本人は自分のことを説明できませんし、
世間の目からは誤解されることも多々あるでしょうが⋯
せめて親である私は、
娘の理解者でありたい⋯🍀そう願っています。

自閉症(ASD)と知的障がい(ID)はどう違う?

ASDは、
脳の神経ネットワークの「偏り」によるものです。
よく働く回路とそうでない回路の差が大きく、
得意なことと苦手なことがはっきり分かれます。

IDは
「情報処理の力そのもの」に関わります。
情報を取り入れて、理解して、覚えて、使うまでの流れがゆっくりで、
一度に扱える量も小さくなりやすい状態です。

そのためIDがある場合、
発達全体がゆっくり進みやすく、
身辺自立も時間をかけて身につけていく傾向があります。

つまり、
ASD:「能力の凸凹(どこが強いか・弱いか)」の問題、
ID:「全体の処理スピードと容量」の問題
と捉えると理解しやすくなります。

ASD・ID単独のお子さまもいますが、
2つが重なると、
できることと苦手なことの差に、理解や処理のゆっくりさが重なります。

そのため、
「どこでつまずいているのか」が周りから見えにくくなり、
困りごとの質も大きく変わってきます。

ASDの特性とは?4つの脳機能で整理する

ASDの特性は、
脳の4つの神経ネットワークの「働き方の違い」として整理できます。

① 感覚処理ネットワーク「過敏と鈍麻が激しく変化する」
コントロールがうまくいかず、その日の体調や状況によって「過敏(敏感すぎる)」と「鈍麻(鈍くて感じにくい)」の間を行ったり来たり。真ん中の「丁度良い」ところで脳を安定させることが難しく、まるで「激しくゆらぐシーソー」のような状態。

② 予測ネットワーク「次が分からない・先が読めない不安」
見通しが立てにくく、予定変更やイレギュラーに弱い。

③ 抑制ネットワーク「切り替えに時間がかかる」
「やりたい」を一旦止めたり、切り替えたりすることが難しい。
※衝動が強く見えるが、背景には「①感覚のゆらぎ」や「②予測の弱さ」も関係している。

④ 社会脳ネットワーク「人とつながりにくい」
気持ち・表情・空気を読み取るネットワークの働きが弱い。

💡この4つの中でも、
①感覚処理 は他のネットワークに影響を与えやすい起点です。
感覚が激しくゆらいでつらいと、脳はそれだけで「いっぱいいっぱい」になり、耐えるために力を使い果たしてしまいます。
そのぶん、先の見通しを立てたり、気持ちを切り替えたり、人とやりとりしたりする「心のゆとり(余力)」がなくなってしまうのです。
感覚が「丁度良い」ところで安定してくることで、
脳のエネルギーに余裕が生まれ、
②予測、③抑制、④社会脳も働きやすくなっていきます。

💡ASDの代表的な3つの特徴も、これらのネットワークで整理できます。

  • 感覚過敏/鈍麻:主に①感覚処理ネットワーク(②予測ネットワークも関係)
  • こだわり:主に①感覚処理ネットワーク(不安定な感覚への自己防衛)②予測ネットワーク(先が見えない不安への自己防衛)
  • コミュニケーションの難しさ:主に④社会脳ネットワーク(不安の背景に①②も関係)

IDの特性とは?

理解やコミュニケーションに時間がかかるのはなぜ?

IDがあると、
理解したことを記憶し、
場面に応じて使う流れが、ゆっくりになりやすいです。

脳の中には、
一時的に情報を置いておく「机(メモ帳)」のようなスペースがあります。
IDのお子さまは、
この「机の広さ」が少し小さいため、一度に処理できる量が少なめです。

そのため、新しい情報が次々と入ってくると、
机の上が混雑してしまい、
整理するのに時間がかかることがあります。

結果として、こんなことが起こりやすくなります。
・ルールの意味を理解するまでに、細かいステップや繰り返しが必要。
・まだ十分に理解しきれていないうちに場面が進んでしまう。
・その結果、不安や混乱が強くなることがある。

周りから見ると「問題行動」のように見えても、
背景には「わからなさ」があることが少なくありません。

だからこそ、
短く、ゆっくり、わかりやすく伝える工夫や
視覚支援が大切になります。
不安定な感覚への負担を減らし、落ち着いて過ごすために重要な支援です。

ASD×IDが重なるお子さまは、どんな状態?

ASDの感覚不安定は、
「激しく揺れる船に乗っている」ような状態、とも言えます。

そうなると、まず酔わないように、
船に「しがみつく(これが「こだわり」として見える)」ことで精いっぱいになり、
周りの声を聞く余力がなくなることも多いです。

実はASDの感覚のつらさは、
IDが重なることで、より過酷になりやすいという側面があります。

例えるなら、
「目隠しをされたまま、激しく揺れる船に乗っている」ような状態です。

ASDの特性として「見通しを持つこと」が苦手ですが、
そこにIDが重なると、
「周囲の言葉や状況の理解」も難しくなります。

その結果、
脳を安心させるための情報(言葉や見通し)を受け取ることができないまま(目隠しをされた状態)、
先ほどの「ゆらぐシーソー」のように「過敏」と「鈍麻」が激しく変化し、
様々な刺激が脳になだれ込んできたりします。

これでは、脳のキャパシティはあっという間にあふれ、「いっぱいいっぱい(キャパオーバー)」になってしまいます。

また、疲労が強いと
「ゆらぐシーソー」はより激しくなり、
脳のキャパオーバーを引き起こしやすくなります。

さらに、
そのつらさを「助けて」と言葉で伝えることも難しいため、
まるで「目隠しをされたまま、激しく揺れる船に乗っているのに、助けも求められず、今にも海に投げ出されそう」
という切羽詰まった事態が起こりやすくなります。

そんな過酷な状況の中で、
お子さまが「必死に生きようとしている健気な姿」こそが、
周囲からは「多動」や「こだわり」「癇癪」として見えているのかもしれません。

だからこそ、
「どう行動させるか」より前に、
どう安心して過ごせるか」の視点が大切なのです。

安心して過ごせることで、脳は
「身を守ること」に張りつめていたエネルギーを
「学ぶこと・人や世界とのつながりを広げること」
に回しやすくなります。
お子さまの持てる力を発揮し、成長への力強い後押しになります。

特性を知った上で、関わりはどう変わる?

特性を知ると、関わりの「出発点」が変わります。

ASD×IDの場合は、
「IDへの支援(②予測への支援)」が土台になります。

激しく揺れている船をなだめ(①感覚処理への支援)つつも、
「目隠しをできる限り薄くしてあげること(②予測)」を最優先にしていきます。

そうすると、
たとえ足元(感覚)が揺れていたとしても、
お子さまが「次の行動へ一歩」踏み出せる(③切り替え・抑制ができる)大きな一助となります。

このように、
まずIDへの支援で「理解と切り替え」を助けながら、
ASDの特性(①感覚)への配慮も重ねていくことで、
切り替えのための余力がより生まれやすくなります。

「まずは分かりやすさで安心を届けつつ、感覚にも配慮する」
これを意識するだけで、関わりは大きく変わります。

1️⃣ 見通しを共有する(②予測ネットワーク)
:「次が分かる」「終わりが分かる」で切り替えやすくなる(目隠しを薄くしていく)

2️⃣ 感覚を整える(①感覚処理ネットワーク)
:学びや外の世界にエネルギーを回しやすくなる(できる限り船の激しい揺れをなだめる)

3️⃣「できた!」の成功体験を積む(③抑制ネットワーク)
:①②で理解と切り替えが助けられることで、
無理なブレーキではなく、前向きな成功体験が積みやすくなる。

4️⃣ 成功体験の喜びをハイタッチで共有する(④社会脳ネットワーク)
:「またやりたい!」の気持ちにつながり、自己肯定感・自己効力感・成長のループができる。

※4つの具体的な関わり方については、後編でお伝えしています。

お子さまの可能性はまだまだこれから

ご紹介した4つのネットワーク(感覚処理・予測・抑制・社会脳)は、
脳の「前頭葉」というエリアに深く関わっています。

前頭葉とは、
人間らしい「考える力」や「感情のコントロール」を司る、脳の司令塔のような場所です。

🌱前頭葉は、20代までゆっくり成熟していきます。
お子さまの前頭葉という「お部屋」自体が、
20代まで長い時間をかけ大きく作られていきます。
また、安心した関わりの中で
「4つの道(ネットワーク)」を使っていくことも、成熟を後押ししていきます。

🌱4つの神経ネットワークは、よく使う経路ほど太く育っていきます。
最初は「細い砂利道」のような状態から、
よく使う道路ほど「太く見通しの良い高速道路」に変わっていきます。

🌱情報処理の「机の広さ」も、少しずつ広がっていきます。
太く見通しの良い高速道路ができていく過程で、伝達スピードが上がっていき、頭の中の情報がより早く片付くようになります。
その結果、脳の「机の上」にゆとりが生まれ、
一度に受け止められる情報量が増えていきます。

※脳の育ち方や変化の現れ方には、大きな個人差があります。
「お子さまなりのペースでゆっくり進んでいくもの」として受け止めてみてくださいね。

【補足】感覚には、どんな種類がある?

感覚には、大きく2種類あります。
・外から入るもの:視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚
・体の内側から無意識に感じるもの:前庭覚・固有覚


・前庭覚(体の傾きや揺れを感じる感覚):目を閉じて体を傾け、元の位置に戻るときの感覚
・固有覚(筋肉や関節の状態を感じる感覚):目を閉じて両腕を同じ高さに揃えようとするときの感覚

こうした感覚に、お子さまが心地よいと感じる適度な刺激を入れていくことで、
感覚を受け取り、調整する力が育っていきます。
その積み重ねが、感覚処理全体の安定や、毎日の過ごしやすさにつながっていきます。

娘の場合、
特に前庭覚刺激(抱っこグルグル・スーパーマン)が好きなので取り入れています。
偏食の娘が、幼稚園の給食はほぼ完食できるようになったり、
苦手だったスライムや粘土でも遊べるようになりました。

【補足】IDがあっても「得意なこと」があるのはなぜ?

IDがあっても、脳のすべての回路が弱いわけではありません。
その子なりに、力を発揮しやすい入口があることが多いです。

たとえば
・音やリズムをとらえるのが得意で、歌やダンスが好き
・形や色を見分ける力が強く、パズルや積み木が得意
・体の動きや感覚が得意で、運動や水遊びが好き

こうした得意な感覚の入口を使うと、
集中して遊びやすくなり、
周りの大人とも、やりとりしやすくなります。
そうした「好き・得意」の回路を使った積み重ねによって、
言葉や学習、社会性などにもつながりやすくなります。

娘の場合、
リズムやパズルが関わりの入口になっています。
好きなことを続ける中で上達が見え、
それが自信や挑戦する気持ちにつながっていると感じます。
また喜びをたくさん共有することで、社会性も育っているように感じます。

読んでくださったあなたへ

お子さまの特性を知り、行動の見え方が変わると、
親御さん自身の心の余白につながります。

子育ては本当に長期戦ですから⋯
「ぼちぼち」やっていきましょう☕

親子の優しい時間が、
毎日の中にそっと生まれますように🌈


ブログを書いている背景や想いはこちら
👈 あすかのプロフィール


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ABOUT ME
あすか
知的障がいを伴う自閉症の娘(4歳)を育てる、元看護師・当事者ママです。 1歳9ヶ月から療育を開始し、8ヶ所の療育機関を経験。娘の行動に「脳機能の視点」を持つようになってから、しんどさの中に少しの余裕が生まれました。 このブログでは、娘の実例をもとに「行動の意味と関わり方」を分かりやすくお伝えしています。 親子の優しい時間が、毎日の中にそっと生まれますように🌈