家庭での関わり方

【関わり方】善意が仇に?一度の経験が「毎回」になってしまう ー こだわりを“生かす”5つのポイント

はじめに:行動は「安心の記録」

知的障がいのある自閉症のわが子への関わり方に、 迷いや不安を感じていませんか。
安心の土台を意識すると、関わりは少しずつ変わっていきます。

こんにちは、あすかです。
前回の記事
善意が仇となる?なぜ一度の経験が「毎回」になってしまうの?
ー 脳が作る「安心パターン」の正体では、

私たちにとって本当に悩ましいジレンマ:
「一度の経験が執着になる」理由を、
4つの脳機能(感覚処理・予測・抑制・社会脳ネットワーク)の視点から
「安心パターンができやすい」脳の特性によるものとお伝えしました。

つまり「こだわり」は、
“安心を取り戻すための方法”として学習されたパターンです。

今回はその続編として、
実際にどのように関わっていけばいいのか——
「どうすれば、子どもの“安心”を守りながら少しずつ前に進めるのか」をテーマに、
私が日々実践している「関わり方:5つのポイント」をご紹介します。
(前回の記事の「関わり方」①〜⑤に沿って順にみていきます。)

焦点は
こだわりを「なくす」ではなく、
「生かす」こと。

読み終えたとき、
「少し気持ちが楽になった」
「これを試してみよう!」
そう感じてもらえたら嬉しいです。

「なくす」ではなく「続けられる行動」に育てる

既にある「安心パターン」を否定せず、
少しずつ新しい行動とつなぐことで、
脳に新しい成功体験を上書きしていきます。

関わり方のゴールは、
「こだわりをゼロにする」ことではありません。
今ある安心のかたちを大切にしながら、
そこから少しずつ
「こういう終わり方もある」
「こういう楽しみ方もある」と、
続けられる行動に広げていくイメージです。

たとえば、
いつも同じ順番でしか動けなかったお子さまが、ある日
「いつものやり方+ほんの少しだけ新しいステップ」
を受け止められたなら、
それは立派な前進です。

安心の土台を崩さずに、
「できた」の経験を上に少しずつ重ねていく——
そんな長い目線で見てもらえたらと思います。

関わり方:5つのポイント

① 否定せず受け入れる


「止められない」ことを責めず、
その背景にある「安心を求めているサイン」と捉える


「また始まった…」
と思う瞬間こそ、
深呼吸のタイミングです。

その行動を「困った」ではなく、
「今、安心を探しているんだな」
というサインとして見てみます。

「この子なりの落ち着き方があるんだ」
と一呼吸置いて、見つめてみてください。

そうすると、
私たちの表情も、声のトーンも
自然とやわらかくなります。

その空気の変化自体が、
お子さまにとって、
一つ目の安心材料になります。

②「安心環境」を優先する


高負荷になりすぎないよう、その日の感覚疲労とその場の刺激量を調整する。


こだわり行動そのものに介入する前に、お子さまを観察します。

  • その日の感覚疲労(幼稚園でぐったりしていないか)
  • その場の刺激量(人の多さ・音・光・におい)
  • スケジュールの詰まり具合(余裕があるか)

これらが高負荷だと、
こだわり行動は「生き延びるための必死の自己調整」として出やすくなります。

たとえば、
「今日は疲れているからスーパーは短時間にする」
「今日は公園はやめて車内おやつにする」

そもそも爆発しにくい選択をすること自体が、立派な関わりです。

娘の場合も、例えば、
幼稚園の降園時に感覚疲労サインが見られたら、
「(人が多い)あの公園→(静かな)別公園に変更」
「帰りに一緒にスーパーに行く→(スーパーの人混みは刺激が大きいから)後で私が一人で行く」

このような工夫を行うことで、
その後の爆発を回避することにつながっていると実感しています。


【補足】「その日の感覚疲労」とは?
「五感から入ってくる刺激に、心と体がくたびれている
=いつも以上に感覚が過敏/鈍麻になっている状態」です。
※刺激によって、過敏だったり鈍かったりが入り混じっています。

もう少し具体的に言うと、
例えばこんなサインを含みます。

  • 音(聴覚):
    いつもよりちょっとした物音や人の声にもすぐ反応してしまう、耳をふさぎたくなる。
    👉逆に、大好きな歌や「おやつだよ!」に反応薄く、無視しているように見えることもあります。
  • 光・映像(視覚):
    蛍光灯や画面の光がまぶしく感じる、目をそむけることが増える。
    👉逆に、お気に入りの絵本やおもちゃを目の前にしても、(いつもならすぐ遊ぶのに)手に入とらないこともあります。
  • 触覚:
    服のタグ・肌ざわり・水や砂の感触などに普段以上に過敏。
    👉逆に、反応が薄くなることもあります。
  • におい(臭覚)・味(味覚):
    食べ慣れたものでも「イヤ!」となりやすい、匂いに過敏になる
    👉逆に、いつもパクパク食べるおやつを、口に入れても「ふーん」って反応したり、好きな匂いに鼻をクンクンしないようなこともあります。
  • 体の動き(身体感覚):
    落ち着いて座っていられない。
    👉逆に、ぐったりして動きが鈍いこともあります。

まとめると、

いつも通りの生活をしているのに、
お子さまの脳のほうに
余裕がなくなっている状態です。

👉音・光・触り心地・におい・体の感覚などを処理しきれず、
イライラ・不機嫌・ぐったり・こだわり行動などで、
やっとバランスを取っているように見えます


そんな状態が見られたら、
「感覚疲労」のサインと受け取ります。
脳が「もうこれ以上刺激処理できないよ」と訴えています。

ここからは、
私自身が「うまくいかなかった関わり」から学んだことを、
少しだけご紹介します。

🍀私自身、過去にやっていた逆効果の関わり
子育てグループで週1回、公園で集まっていた時のこと。
停めてある全ての自転車の鍵を触り、
何度連れ戻しても道路を挟んで向かいの自動販売機に向かってしまう娘の姿を前に、
私の心の中は
「娘の見ている世界に寄り添いたい」気持ちと
「周りの目が気になってしまう」気持ち、
「娘を遊具や砂場(皆がいる場所)に誘導したい」気持ち…
様々な気持ちが交錯する孤独の中、
いつも過ごしていたように思います。

でも、今思うと…
そもそも、その集まり・公園自体が、
娘にとって高負荷で「安心環境ではなかった」。
さらに…誘導する(抱っこして連れていく)ということは、
「これ以上処理できない状態の娘の脳に追い打ちをかける」
行為だったと振り返っています。

🍀プレ幼稚園でのエピソード
プレ幼稚園でも、娘は教室中を動き回り、窓の鍵やカーテン、空気清浄機に向かって一直線、外に出ていって水飲み場でひたすら水を出す。
そんな娘に対し、
先生は一生懸命に名前を呼び続け、
「これはね、〇〇なんだよ」
などとアプローチし続けてくれました。
しかし、娘には一切、その声は届いていませんでした。
そもそも先生の方を見向きもしないのです。
当時、「先生の一生懸命さはありがたいけど、そのやり方じゃ届かないんだよな…」
と感じていました。
娘に合わせた関わり(好きなおもちゃをそばに置いておく、教室のドアは閉めておくなど)を配慮してもらえないか相談しましたが、他の子の手前上、
難しいとのお返事でした。

今思うと…
娘にとっては
『ここから逃げたい』気持ち
を強めてしまう関わりだったと振り返っています。

🍀私たち親がやりがちな、
お子さまの鈍麻に対する一例

例:いつもなら飛びつくおもちゃに反応なし

親の善意:
「つまらないのかな?楽しませてあげよう」
→ 声かけ・おもちゃ・遊びに誘う

子の脳:
「刺激過多でシャットダウン中」
→ さらにパニック・拒否・癇癪(疲労悪化)

適切な対応:
それは『刺激を減らしてほしい』という無言のサイン。
→「今は充電タイムだね」と捉え、
静かに見守る。
→子:「少し回復した…ママ安心…スイッチ再起動」

🌸親御さんの「してあげたい!」は尊い気持ちです。
でも、お子さまが「高負荷」になりすぎないように、
安心環境(その日の感覚疲労と刺激量を調整すること)を優先しましょう。
親の愛情=刺激の量ではありません。

🌸お子さまの行動の変化は、
いつも“安心”から始まります。
親御さんが
環境の味方になってくれるだけで、
お子さまの中の「できる力」は
少しずつ姿を現していきます。

③ 安全な代替を用意する


同じ役割を持つ「別の行動」をつくる

②の安心環境を意識したら、
今のこだわりと同じように安心感が得られる、「別の行動」を
そっと育てていく段階です。

🍀娘の実例①
スマホの衝動性に駆られた時に、
光る砂時計を渡すと、
自己調整が成立し、
一瞬にして衝動が抑えられたりします。

スマホ衝動性(視覚刺激+即時快感)
↓ 置き換え
🔄 光る砂時計(視覚刺激+予測可能な時間経過)
↓ 結果
✅ 自己調整成立・衝動抑制成功!

🍀娘の実例②
スマホの衝動性に駆られた時に、
三輪車に誘うと、
スムーズに置き換えできることが多い。

スマホ衝動性(視覚刺激+即時快感)
↓ 置き換え
三輪車(深部圧刺激+リズム運動)
↓ 結果
✅ スムーズに置き換え・落ち着いて遊ぶ!

【補足「同じ役割」の意味
感覚パッケージ(視覚刺激 ↔ 深部圧刺激)は違っても、
「衝動を抑えて安心する」
という心の役割が同じなら、
立派な「安全な代替」になります。

【実践のポイント】
大事なのは
「ダメ!」と取り上げるだけにしないこと。
お子さまの「安心の好み」をよく観察して、
同じように安心できる
「次のアイテム・次の行動」を
そっとそばに置いていきます。

過去記事でも詳しく紹介しています:
【関わり方】
スマホ衝動性と動画のこだわり:
「環境調整」と「スモールステップ」で整える
👆 目次2‐③「自己調整を促す代替アイデア」をよければご覧ください。
光る砂時計・トランポリン・おんぶなど、
自己調整代替アイデアが満載です!

④「上書き」の機会を少しずつ増やす

小さな成功を積み重ねる

③で「安全な代替」ができたら、
こだわりパターンを少しずつ新しい流れで「上書き」していきます。

視覚スケジュールや口頭リストで
具体的な流れを伝え、
小さな成功体験を積み重ねる段階です。

ポイントは、
「今のこだわりをゼロにする」ではなく、
「今のこだわりの前か後に、
別の行動をちょっとだけ足していく」
イメージで進めます。

🍀娘の「小さな成功」実例
・スマホ衝動:
光る砂時計をサッと渡す
(視覚刺激の置き換え)

・台所で水遊び衝動:
「お風呂入ろう!」・バケツにお水+おもちゃでベランダ(場所の置き換え)

・夜に「三輪車行きたい!」欲:
「外は行けないけどベランダで遊ぼう」
(場所の置き換え)

・こだわりの前に、必須のタスクを入れる:
口頭リスト(「①〇〇、②△△」という伝え方)で
「①着替えや歯磨きなど(必須のタスク)
②三輪車、シールなど(その時の執着)」

※娘の場合、
視覚支援は理解の助けになりますが、
口頭で「①〇〇、②△△」のような伝え方をすると、
スッと頭に入りやすいようです。

【実践のポイント】成立したらご褒美タイム!
・褒める「やったね!できたね!すごいね!頑張ったね!」
・だっこグルグル
・おんぶ など

パパにも「見て!できたよ!」と喜びをシェアすると、
娘も嬉しそうにします。
ママ・パパの関わりの一貫性にもつながり、
娘の安心感にもつながっています。

このようにして、
小さな成功体験が
自然と上書きされていきます。

⑤ パパ・ママの違いを活かす

それぞれの「安心パターン」を尊重し、“役割分担”で支える

関わりの主役は、親一人ではありません。
パパとママ、それぞれの役割を生かしてみてください。
それだけで、お子さまは
「どちらの世界も大丈夫」と感じ、
心の地図を広げていきます。

🍀我が家の場合
ママ:「安心役」(家の中・室内遊び・散歩・いつもの公園)
パパ:「挑戦役」(スーパー・外出・新しい刺激)


🍀我が家のリアル
普段は、ママが娘の安心をキープ
お出かけは、あえてパパと2人で

3人一緒だと、
娘はママにくっついて甘えモード全開😅
もったいない時間+ママ疲労…

でもパパと2人だけだと、
娘もモードが切り替わるのか、
それなりに経験し平穏に過ごします。

しばらくの間
「みんなでお出かけしたい…」
「娘が寂しがるかな、私も寂しい…」
そう感じていました。

でも今は
「この役割分担が娘のため、私のため」
と気づき、割り切って、
私は娘の前で「笑顔でいる☺️」
ことに全力投球しています。

とはいえ…
レストランで3人でご飯を食べて、
その後はパパと2人でお出かけ…など
時に部分的に「みんな」の経験もします。

ご家庭によっては、
逆の役割パターンのこともあるかもしれませんね☺️

家族みんなが笑顔で回る、
これが一番ですね💕

おわりに:「できることから、一歩ずつ」で大丈夫

ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございます。

5つのポイントをお伝えしましたが、
「これならできそう」と感じたところから、
試してもらえたら嬉しいです。

そして、ほんの小さな変化でも、
「あ、前よりスムーズかも」
「今日はここまでできた」
と感じる瞬間が増えていったら、
もっと嬉しいです。

お子さまも、親御さんも、
前より少しでも
「生きやすいな」「ラクになったな」
と感じられる日が増えますように…🌈

お子さまが
「大丈夫」「できた!」と思える場面が、
増えていきますように…🌈

行動の背景にある
「脳の働き」については、
看板記事
「自閉症×知的障がい」
行動理解のためにまず知ってほしい:
「4つの脳機能」の視点と希望
で全体像を整理しています。

今回の記事とあわせて読んでいただくと、
「なぜこういう関わり方になるのか」
がより腑に落ちると思います。
よければ、ご覧ください。


___


このブログを書いている背景や想いは、
プロフィールにまとめています。
同じように悩みながら、
お子さまと向き合う親御さんの
小さな安心につながったら、
とても嬉しいです。

ABOUT ME
あすか
こんにちは! 自閉症と知的障がいの3歳娘を育てる、一児の母です。 専門は看護ですが、現在は専業主婦として日々の育児に奮闘しています。 1歳9ヶ月から療育を始め、これまでに7ヶ所の療育機関を経験しています。娘が「安心して過ごせる環境につながり、成長が広がるように」と願い、幼稚園入園のために、教育移住という大きな選択もしました。 娘を育てることに必死に向き合う日々。親として、社会とのつながりの中で生まれる様々な感情とも対峙してきました。しんどいことも多かったです。でもそのしんどさの原因を突きつめていくと・・・結局・・・目の前で見続ける娘の不可解な行動を、「どう捉えて良いか分からなかった」からだと気づいたのです。 そんな行動にも、脳機能の視点でみれば「そうなるべく理由」がある。そのことを認識してから、私の気持ちに少しの余裕が生まれ、娘との日々を楽しめるようになっていきました。 「障がいがあっても、成長し続ける」これは娘を見続けてきて確信した、大きな希望です。実がなるまでに時間がかかるけど・・・あきらめないで、希望を持ってやり続けること、それが本当に重要なことだと実感しています。 このブログでは、娘の実例をもとに 「気になる行動の意味と関わり方」を、 脳機能の視点から、やさしく分かりやすくお伝えしています。 皆さまが、よりラクに、親子の優しい時間が、毎日の中にそっと生まれますように🌈 どうぞよろしくお願いします✨️