はじめに
知的障がいを伴う自閉症のわが子の行動に、
「どうしていつもこうなるの?」
「どうしたら良いの?」
と悩んでいませんか。
脳機能の視点から見ると、
わが子の見方が変わり、
自然と対応も変わってきます。
こんにちは。あすかです。
私には知的障がいのある自閉症の娘(4歳)がいます。
娘の健やかな成長のために、7つの療育機関や教育移住を経験しながら、
現在は専業主婦として、日々子育てに向き合っています。
娘と関わる上で
「共感」・「代弁」は意識してきたけれど、
娘の行動、反応を前に
・協力してよ
・何やってるの
・やめて
・イライラする etc…
そんな湧き上がる感情のやり場が分からず、結果として強い口調で当たってしまう自分がいて、しんどかったのです。
保健師・看護師として学んだ知識と、
母としての経験を重ねる中で、
ようやく「腑に落ちる理解」にたどり着きました。
「行動の背景にある4つの脳機能」を意識し始めると、自然と、
- (拒否しているんじゃなくて)感覚が過敏なのかな
- (困らせたいんじゃなくて)そうやって自分調整しているんだよね
- (情報処理の容量とスピードがゆっくりだから、何度伝えても)難しいんだね。
伝え方を変えてみよう - (身体感覚が不安定だから)転びやすいんだね。etc…
娘は“困った子”ではなく、“困っている子”だと分かったのです。
- 少し「優しいまなざし」で娘を見られるようになり、
- 「今この瞬間、娘が直面している気持ち・しんどさ」に、思いを巡らせることが増え
(本当の理由は本人にしか分からないとしても)、 - ゆっくりだけれど、娘のペースでこれからも成長していく、
という確信と希望が持てるようになりました。
そうしていくうちに、
私自身の心が少しずつ軽くなってきました。
もちろん今でも、毎日が
「自分との折り合いの闘い」だったり、
試行錯誤の日々ですが、
何度でもこの原点に立ち戻ることで、
心のバランスを保てています。
同じようにしんどい思いをされている親御さんに向けて、
この記事では、
お子さまの行動を理解し、
関わり方につなげていくための、
基礎的な脳の捉え方についてお伝えします。
自閉症(ASD)と知的障がい(ID)の違いとは?
まず大前提として、
自閉症(ASD) と 知的障がい(ID) は
別の特性 です。
●ASD=脳の神経ネットワークの「偏り」
偏りとは
・よく働くところと、
そうでないところの差が大きい状態
・バランスよくではなく、
あるところだけ強く/弱く働いている状態
・得意な道と苦手な道が
はっきり分かれている状態
●ID=
脳全体の構造や神経ネットワークの発達が 全体的に「弱く」、
情報処理の土台が「小さく・ゆっくり」している状態
=知的な発達が全体的にゆっくりで、
「処理できる量やスピードが小さい」
ASD があっても
知的な遅れがない子も多いし、
ID があっても
自閉症ではない子もいる のが特徴です。
でも——
両方が重なると 、
行動の背景が“複雑”になり、
“困りごとの質” が大きく変わる。
ここを押さえておくと、
次の「脳機能」の理解が一気に楽になります。
ASDを“脳の機能”で見る
①感覚処理ネットワークの働きに“ゆらぎ(不安定さ)”が大きい→刺激の受け取りが不安定(その時々で過敏になったり鈍麻になったりする)
ASDのお子さまは、入ってきた感覚の感じ方や整理のされ方が、そのときどきで安定していない状態です。
感覚には2種類あります
① 外側から来る感覚(認識できる、意識しやすい)
視覚・触覚・聴覚・嗅覚・味覚
② 内側から来る感覚(無意識・コントロール困難)
触覚・前庭覚・固有覚
🍀前庭覚と固有覚とは?親御さんで試してみて☺️
・前庭覚
目をつぶって椅子に座り、ゆっくり右(左)に体を倒してください。
その状態から、『元の位置(真ん中)』に戻ります。
真ん中に戻ろうとする感覚⋯
これが前庭覚(体の傾き・揺れを感じる感覚)です!
・固有覚
目をつぶって椅子に座り、右腕(左腕)を挙げてください。
左腕(右腕)も『同じ高さ』になるよう挙げてみます。
ピタッと揃う感覚…
これが固有覚(筋肉の張り・関節の角度や位置を感じる感覚)です!
ASDのお子さまの感覚パターンは、3段階で複雑です
①「感覚」の種類によって「過敏/鈍麻」が違う
娘の場合:
- 外側触覚:過敏(どの体の部位も触られると基本嫌がる)
- 内側触覚:鈍麻(怪我をしても痛がらない・人との程よい距離をつかめず、近すぎる)
- 前庭覚:鈍麻(遊園地の絶叫系の乗り物大好き・公園ではブランコばかり)
- 固有覚:鈍麻(動きを模倣するダンスや体操が苦手。力加減が調整できず動作が乱暴)
② 同じ感覚でも、「体の部位」で「過敏/鈍麻」が違う
娘の場合、外側触覚の中でも:
- 首筋・背中:鈍麻傾向(割と平気)
- 顔:過敏傾向(前髪の整髪をとても嫌がる) ※お風呂の時は平気
- 砂場・スライムなど:過敏(砂場の砂は今だ素手で触ることに抵抗あり)
③ 「日や状況」でさらに変わる(感覚処理ネットワークの「ゆらぎ」の典型例)
娘の場合、
お風呂足裏:
- 普通に洗える日 → 鈍麻継続
- 足指丸めてくすぐったがる日 → 一時的に過敏に切り替わる
顔:お風呂という状況なら、触られても平気
その他、お子さまのあるある例
- ある日は音にすごく敏感なのに、別の日は平気。
- 服のタグが気になって何も手につかない日もあれば、
まったく気にしない日もある。 - ある場面では上手に歩けるのに、別の場面ではよく転ぶ。
- 姿勢をまっすぐ保てない(前庭覚を感じにくい)
- 頭や体をいつも動かしている(前庭覚を感じにくい)
- 動く遊具が怖い(前庭覚を感じやすい)
- 高いところや足場が不安定なところを嫌がる(前庭覚を感じやすい)
- 姿勢が悪く、ダラダラしているように見える(固有覚を感じにくい)
- 体を誰かに動かされるのを嫌がる(固有覚を感じやすい)
感覚は、疲労や不安などのストレス時は、過敏/鈍麻 が強まりやすい
娘の場合、家では頭を振ったり、ぴょんぴょん跳ねていることが多いです。
これが、幼稚園の長期休みで雨の日だったりすると⋯
それらの行動が増強することがあります。
また、どのお子さまにも共通だと思いますが、
ストレスがかかると、なおさらこだわりも強く、また発動しやすくなります。
自分の身体に必要な感覚は、お子さまが一番分かっています
お子さまのその行動は、足りない感覚を補うための「自己刺激」のことが多いです。娘が頭を振ったり、ぴょんぴょん跳ねたり、物を投げたり、思い切り走り回ったり、ドアを開け閉めしたり…ずっと動き回っている姿に「やめて、落ち着いて」と感じますが、その一方で、「そこまでして自己調整しているんだな。大変だな」とも感じています。
多動嵐は癇癪嵐に比べれば、精神的疲労ははるかに少ないです(笑)
「落ち着きがない子」ではなく、
「前庭・固有覚の取り入れが必要な子」なんです。
感覚の「ゆらぎ」こそが、毎日同じ対応が効かない理由
その日によって、状況によって、反応が違う。
こだわりの強弱も違う。
私を含め親御さんにとっては、予測不能ゆえの、対応疲れの原因になってきます。
この「ゆらぎ」にまず寄り添い、安心の土台を整えていく視点を持つことが、
その先の「予測・抑制・社会脳」に波及していくために大事なことです。
感覚は、成長とともに変化します
例えば娘の場合、
・外側触覚の過敏で:
帽子・マスク・髪留めなど強い抵抗がありましたが、
幼稚園で毎日帽子を被ったり、お友だちがマスクや髪留めをしている姿を見てか、
今では自主的にそれらをつけたがるほどに変化しました。
また、スライムや粘土では(固有覚鈍麻が功を奏してか☺)遊べるように変化しています。
・味覚の過敏で:
偏食がずっと続いていますが、幼稚園の給食生活のおかげ(お友だち効果はすごい!)
もあり、給食は基本完食!家でも少しずつですが、食べられる食材が増えています。
「ゆらぎが大きい」ことと「こだわり」の関係とは
「常に揺れる船の上にいるような感覚」を想像してみてください。
そんな時、あなたはどういう行動をとるでしょうか?
「動きのパターンを固定して、どこかにしがみついて、酔わないように」
するのではないでしょうか?
子どもたちにとって、その「動きのパターンを固定する」=「こだわり」なのです。
酔わないために、必須な行動なのです。
さらに、そんな時に行動の切り替えを促されたら⋯
「それどころじゃないよ!」状態ですよね。
ただただ、しがみついて酔わないようにすることに必死なわけです。
人の声を聞いている余裕などありません。
揺れる船を止めてくれたら(安心できる状態になれば)、
そこではじめて人の声が聞けて、次の行動に移せる(切り替えできる)のではないでしょうか。(あるいは、よっぽど魅力的な提示だったら別かもしれませんが⋯)
まず、見方が変わる♪大切なことです☺️
②予測ネットワークの働きが弱い→次が分からない不安
- 先の見通しを立てにくい
- 予定変更・予測外に弱い
- 不安からパニックにつながりやすい
③抑制ネットワークの働きが弱い→やめられない衝動
- 「やりたい」を一旦止めたり切り替えたりすることが難しい
※衝動が強く見えるが、背景には
「感覚のゆらぎ」や「予測の弱さ」が関係している
④社会脳ネットワークの働きが弱い→人とつながりにくい
- 人の気持ちや意図を読み取るためのネットワークの働きが弱い
- 気持ち・視線・表情の変化が読み取りにくい
- 「人」よりも「物」「ルール」「形」に注意が向きやすい
- 集団の中で “空気を読む” ことが難しい
IDを“脳の機能”で見る
「情報処理の土台」が全体的に小さい・ゆっくりという特徴がある
- 理解→記憶→応用 のサイクルがゆっくり
(脳全体で扱える「処理の容量」が小さい) - 新しい情報を整理するのに時間がかかる
- ルールの意味を理解するまでに、細かいステップや繰り返しが必要
- 「理解しきれていないうちに場面が進んでしまう」が起こりやすい
周りのスピードについていけず、その結果、
不安→混乱→問題行動のように見えることがある(でも根っこは「わからなさ」)
「強みの回路」がはっきりしていることも多い
知的障がい(ID)があっても、
脳の中のすべての回路が弱いわけではなく、
「ここだけはつながりが良くて、ぐんぐん伸びる」
という得意なルートがある子が多い。
- 音やリズムをキャッチする回路が強くて、歌やダンスが得意
- 形や色を見分ける回路が強くて、パズルや積み木が得意
- 体の動きやバランスを感じる回路(身体感覚)が強くて、運動や水遊びが得意
その「得意な感覚の回路」を入口にすると、
言葉・社会性・学習など、他の力も一緒に引き上げていきやすい。
ASDとIDが重なることで“困りごとの質”が一段と複雑になりやすい
「ASD×ID」で“困りごとの質”がぐっと変わる理由
- ASDだけなら
「予定が変わるとパニック」「音や光がつらい」などの困りごとが
主な特徴として表れやすい子もいる。 - IDだけなら
「覚えるのに時間がかかる」「説明してもなかなか理解にたどり着けない」
などが中心になりやすい。
これがASD×ID両方あると、
- 「そもそも理解するスピード・量が少ない(ID)」うえに
- 「感覚処理・予測・抑制・社会脳ネットワークにも偏りがある(ASD)」
という二つの特徴が重なるので、
- 前提として感覚が不安定(ASD)
- 何を言われているのか分からない(ID)ので、
余計に見通しが立ちにくい。余計に不安やストレスが溜まりやすい。 - そうなると、余計に抑制も難しくなる。
というような状態に陥りやすい。
つまり、IDも重なることで、
同じ出来事でも
「不安」や「恐怖」がより大きくなりやすいのです。
その結果、
- 強いこだわりや癇癪
- パニックや逃避行動
- 多動 etc…
周りからは、いわゆる「問題行動」が生じやすくなります。
でも、本人からしたら…
それらの行動は当然の結果なのです。
▶なぜ「当然の結果なのか」を詳しくお伝えしている記事はこちら
スマホを見たら即パニック!自閉症児の衝動性の正体:
親のせいじゃない、脳の仕組みとこだわりの真実【行動の意味】
自閉症児の「一度の経験」がこだわりになる理由:
善意が自分を苦しめる!
元看護師ママが綴る、脳の安心パターンの正体【行動の意味】
よければ、ご覧ください。
だからこそ大事になること
- 「脳の偏り」(ASD)と「処理のゆっくりさ」(ID)を念頭に起き、
お子さまの脳に合った「方法」と「スピード」で関わること - 安心できる環境(信頼できる人、構造化された環境、その子に届く方法:声かけや視覚支援など)を整えること
🌸お子さまにとって「安心」がもたらす意味:
①4つのネットワークが働きやすくなる(本人の力が発揮されやすくなる)
②4つのネットワークが太く、安定していく(成長していく) - 栄養・睡眠・療育・薬物療法などの視点も大切
▶︎薬物療法についてはこちら
自閉症児のエビリファイ服用12日間のリアルな効果:
元看護師ママが綴る、安心と成長を後押しする選択
よければご覧ください。
安心の作り方:
日々の関わりにおける、各ネットワークの順番の視点
- 感覚処理ネットワーク(感覚処理をまず整える)
→ 「安心基盤」を作る。
方法:感覚刺激・感覚統合、刺激を「ちょうどいい」に調整 - 予測ネットワーク(「見通し」を共有)
→ 「次が分かる」「終わりが分かる」と気持ちが落ち着く。
方法:口頭・視覚支援・共同決定など - 抑制ネットワーク (①②がある程度整うと、抑制が効きやすくなる)
→ 「できた!」の成功体験を積む。
方法:短くはっきりした言葉(行かない!残念!など)
※感覚処理と予測がある程度整っていると、
子どもたちは「今はできない」「次はない(おしまい)」
などという状況を「受け止める余力」を持ちやすくなります。
その状態で「短く明確な」言葉を入れると、
情報量が少ないぶん脳が処理しやすく、抑制の切り替えが起こりやすくなります。
「行かない!残念!」が効く(娘の場合)のは、
単に強い言い方だからではなく、
前段で安心と見通しができているからこそ、その一言が整理された制止として届く、
ということです。 - 社会脳ネットワーク(社会脳で締めくくる)
→ 小さな成功「できたね!やったー!」で「共有喜び」の経験を積む&上書き。
方法:ハイタッチ・ハグでギュッ・抱っこグルグル・シール貼りなど
(これらの刺激[固有覚・前庭覚・視覚刺激]によって、情緒の安定にもつながるので一石二鳥!)
※上書き:切り替えそのものが“いやなこと”ではなく、“できた・うれしい・またやれそう”という経験として脳に残っていく、という意味。
▶︎ 「行動の意味」を踏まえた、具体的な関わり方の工夫はこちら
自閉症児のスマホ依存・動画のこだわり:
環境調整とスモールステップで整える、当事者ママの切実な工夫【関わり方】
自閉症児のこだわりを“生かす”5つの戦略:
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よければご覧ください。
強みの回路を見つけてあげたい
ASDとIDが重なり、感覚処理にゆらぎがあり、理解のスピードや量も全体的にゆっくりでも、その中に「好き」「安心できる」「続けられる」感覚や活動が見つかれば、そこがその子にとっての強みの回路になりえます。
娘の場合は、リズムが大好きで、太鼓を叩いたりピアノをノリノリで弾いてるフリ(笑)をすることが好きです。短く明確な言葉で伝える際も、リズムに乗せて伝えると、ただ言葉だけで伝えるよりも言葉を受け取りやすく、よって行動に移しやすくなります。
ゆっくりでも育つ脳の力・ASD×IDの子どもたちの希望
●そもそも、『前頭葉』の発達は10代がピークで、20代まで成長し続けます。
●4つの脳機能(感覚処理・予測・抑制・社会脳)は、成長と経験の中で、
つながり方を変えながら発達を続けていきます。
神経ネットワークは、
よく使う経路ほど太く、安定していき、
情報処理の土台も、
その子なりのペースで少しずつ「扱える量」と「スピード」が育っていきます。
●今日できないことも、
「安心できる人・環境」と、
「その子に合ったペースの小さな成功体験」が重なっていくことで、
感覚処理・予測・抑制・社会脳のネットワークが少しずつつながり直し、
明日のその子の働き方を変えていきます。
そうやって、
神経ネットワークと情報処理の土台がじわじわ育っていくプロセスそのものが、
ASD×IDの子どもたちにとっての大きな希望になります。
●これらのことは、親にとっても大きな希望となります。
その成長を支えるのは「安心の土台」
●4つの脳機能(感覚処理・予測・抑制・社会脳)がゆっくりでも育っていくためには、まず「安心していられること」が何よりの土台になります。
●そうすることで、脳は
「身を守ること」に張りつめていたエネルギーを
「学ぶこと・人や世界とのつながりを広げること」
に回しやすくなり、成長へとつながります。
●ASD×IDの子どもたちでは、
分からなさや感覚の辛さから不安が高まりやすいからこそ、
「どう行動させるか」より前に
「どう安心して過ごせるか」
を整えることが、
神経ネットワークと情報処理の土台を少しずつ育てていく、いちばんの近道になります。
おわりに
・この子はずっとこのままなんだろうか。
・この先、特性がもっと強くなって、どんどん大変になっていくのではないか。
そんなふうに感じる親御さんへ。
自閉症×知的障がいの子どもたちは、
たしかにゆっくりですが、
その子のペースで、
脳のネットワークと「できること」を少しずつ伸ばしていく力を持っています。
今日見ている行動も、
明日には少し違って見えるかもしれません。
理解は、すぐに答えをくれなくても、
親子の時間を、
やさしいものへと導いてくれます。
日々の関わりを考えるときに、
このブログが、
ほんの少しでも「心が軽くなった」
と感じてもらえるきっかけになれば、嬉しいです。
この記事でお伝えした考え方は、
保健師・看護師としての知識と、
知的障がいと自閉症のある娘との
日々の経験の中で、
私自身が試行錯誤しながら
大切にしている視点です。
このブログを書いている背景や想いは、
プロフィールにまとめています。
よければ、あわせてご覧ください。
