発達障がいや知的障がいを持つお子さんを育てている親御さん。特にエビリファイ服用について「実際どうなの?」と不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、3歳児の親として、また保健師・看護師の資格を持つ立場から、エビリファイを始めるまでの経緯や、12日間服用した際の変化・副作用、親として感じたことなどをまとめています。
リアルな体験談だからこそ伝えられる、「うちの子も、、、」と悩む保護者の方の安心や参考になれば幸いです。
目次
1.【知的障がいありの自閉症娘3歳】がエビリファイを開始した経緯
1.1.エビリファイ開始するまでの生い立ち
1.2.医師にエビリファイを勧められた時に感じたこと
1.3.エビリファイの基礎知識
2.エビリファイ開始から12日間の効果
2.1.娘の年齢・体重・エビリファイの容量
2.2.エビリファイ服用後の具体的な変化
2.3.エビリファイを開始して保護者が気になったこと&どう対応したか
2.4.エビリファイ開始後も変わらないこと
2.5.エビリファイの副作用はあった?
2.6.12日間内服後の医師の評価
3.今後の見通し
4.保護者としての感想
5. まとめ
【知的障がいあり自閉症娘3歳】がエビリファイを開始した経緯
エビリファイ開始するまでの生い立ち
乳児の頃から不器用さ、共同注意ができない、模倣しない、色々な物を回す、1歳4ヶ月で歩き始めたころから本格的に娘のこだわりと多動・注意困難が気になり始め、1歳9ヶ月から「自閉スペクトラム症の疑い」の意見書にて、民間の療育に通い始めました。2歳3ヶ月から母子同伴で幼稚園のプレに通いましたが、そこでも多動とこだわり(混乱して周囲の声かけが頭に入らず、安心するために自分の知っているもの・ことを探す=多動に見える)でほとんど参加できず、周囲の目線が辛く、私の方が行き渋りになっていました。
発達障がいの子が安心して過ごすことができる環境が整っている幼稚園を求め、マンションを売却し、同じ都内ではありますが教育移住しました。幼稚園はマンツーで加配がつき楽しくやっているようですが、先生もやはり娘のこだわりや注意集中保持困難のところで試行錯誤しているとのことでした。
家ではとにかく娘を観察し、その都度環境調整に徹してきました。療育で娘が学んだことや先生の娘への関わり方も取り入れてきました。
しかし娘のこだわりや癇癪は増していき、娘の様々な感情・意思が成長しているにも関わらず言葉で伝えられないために、奇声も頻繁に出るようになりました。こんな状態のため学びも積み上がらず「こんなにもずっと同じことをやり続けているのに・・・」と報われない気持ちに何度も襲われます。「もうやれることは全部やった、これが限界。この子は(多動とこだわりで)このまま机上で課題に向き合うことができないまま、学ぶ機会さえ作れないまま、大きくなっていくのだろうか。。。」お手上げ状態でした。
3歳5ヶ月で自閉スペクトラム症、発達性協調運動症(DCD)、ADHD疑いの診断を受け、3歳6ヶ月の田中ビネー知能検査Vの結果で中度知的障がいの診断を受けました。診断を受けた時は、ショックな気持ちは一切なく、「やっと出発点に立てた!」という晴れやかな気持ちでした。(これまで周りの大人、医師でさえ、私の訴えや違和感を理解してもらえない経験を沢山積んできましたので・・・)
現在は幼稚園の他に、民間のマンツーマン療育(ABA)、民間の小集団療育、市の発達支援センター(小集団)、作業療法を受けています。
医師に内服を勧められた時に感じたこと
知能検査の知能指数は42、注意集中を持続させることの困難さや、興味関心による取り組み方の波などが顕著に見られたとのことでした。
また「夏休み明けから家、幼稚園でもこだわりが強くなっている」旨を医師に話したこともあってか、「お母さんやれること全部やってるから、、、薬使ってみない?」「ずっと飲み続けなきゃいけないわけじゃないのよ」とエビリファイを勧められました。
薬を勧められる心の準備はしていなかったため一瞬戸惑いましたが、私はもともと薬に否定的な気持ちはなく、薬を使うことで本人がよりハッピーに・より成長の助けになるのであれば、使う価値ありという考えでした。さらに、私自身も「これ以上どうすれば・・・」の気持ちと「この先の娘の未来」の限界が見えていたこともあり、使うか迷う理由はありませんでした。
「エビリファイは次のような症状に処方されます」の説明書きを読むと「すぐに気分が変動する」、「ドアをバタンと閉める」は特に、とても当てはまりました。
エビリファイの基礎知識
- 主に統合失調症や双極性障がい、自閉スペクトラム症(ASD)などの治療に使われる非定型抗精神病薬であり、小児にも適応がある。
- ドパミン、セロトニンなど複数の神経伝達物質に作用し、「興奮」、「癇癪」、「多動」、「不安」などの症状の緩和を目指す。強い癇癪や攻撃性の改善効果も認められている。
- 決して「万能薬」ではなく、他の治療や支援と組み合わせて使うのが基本。
- ・主な副作用には、眠気、食欲増進、体重増加、落ち着きのなさ、稀だが不随意運動(錐体外路症状)や高血糖などがあり、小児では観察力が特に求められる。
エビリファイ開始から12日間の効果
開始時の娘の年齢・体重・エビリファイの容量
販売名:エビリファイ散1%
- 年齢:3歳7ヶ月
- 体重:15.5kg
- 容量:エビリファイ散1% 0.05g(1g中に10mgなので0.5mg)/夕食後1回
エビリファイ服用後の具体的な変化
早速、次の日の朝から娘の明らかな変化を感じます。
- 多動が軽減→走り回っていない
- 穏やかに一人遊びをしている
- 指示が入りやすくなる→食事、着替えがスムーズに感じられる、スーパーの買物で「今日は買わない」の説明がすんなり入る(感動しました!)
- やりとりが成立してきた感覚→ 一緒に遊べる感覚が少し出てきて、結果動画視聴の時間が減少。
- 自分の要求を「落ち着いて」表出する(「違うところ(公園)に行きたい」など)
食欲は変わらず(むしろ偏食は相変わらずですが良く食べています)、日中の眠気など特に気になることもなく、活気があります。
睡眠についても明らかに変化しています。寝つきが良くなり、睡眠時間も長くなりました。中途覚醒はあっても、夜泣きはありません。服用を始めてから、昼寝も時折するようになりました。
幼稚園での様子を聞くと、「動き回らなくなった、指示が入りやすくなった、言葉が増えた」ということで、家での様子を見ている保護者と同じ感想でした。
服用後数日の時、幼稚園と療育施設に様子を確認したところ「ボーっとしていた」と言われ気になったのですが、ほんの数秒とのことで「活動に支障があるほどではない」とのことでした。
総じて、以前より娘の精神が安定し、活動により参加できるようになっているようです。そして、私も夫も育児困難感が軽減しています。
こだわりや要求がなくなるわけでも減るわけでもありませんが、その後の癇癪などがマイルドになっているという感じです。
エビリファイを開始して保護者が気になったこと&どう対応したか
開始後すぐから、娘の多動がなくなり落ち着いている様子に、別人のようにさえ感じました。この様子が普通の子なのだと思いますが、何せ娘は多動で激しかったもので・・・「元気いっぱいの娘がいなくなってしまった、娘の個性がなくなってしまった」ように感じ、「飲み続けて良いのだろうか」と不安になってきました。また、幼稚園の先生は「3歳で薬を飲んで大丈夫なのか」と私に伝えてくれました。
そこで、かかりつけの薬剤師と医師にその旨確認しました。結果、3歳児の服用に関しては大丈夫とのこと、前述の「子どもの良さが消えてしまうようで不安」という気持ちに対しては、「どの保護者も共通して直面すること。様子を見てほしい」と伝えられました。確かに、「こだわりや要求の内容は変わっていない」ことに逆に安心感を覚え、個性が失われたわけではないと感じ、納得して服薬を継続することができました。内服して10日も過ぎた頃から、以前のように家でトランポリンを満喫する元気いっぱいの娘の姿に戻りました。
エビリファイ開始後も変わらないこと
とはいえ、問題行動がなくなったわけではありません。注意を引きたい時や思い通りにならない時は、ドアをバタンと閉めたり、寝転がって足でドアや壁を蹴ったり、、、という行動はあります。よってこれまで通り、環境整備や関わり方が大事なことに変わりはありません。
また、「周りが気になって、今やっていること(やるべきこと)への集中がすぐに途切れる」ことは変わりません。よって、集中できる環境作り(構造化や声かけの仕方など)は続けて必要です。
副作用はあった?
副作用は特別なかったのですが、強いて言うなら、薬を飲み始めてから3日間排便がないことがありました。(普段も便秘気味で、時折酸化マグネシウムで調整してはいるのですが、3日間というのはそうあることではないので・・・)また、もともと偏食なのですが、偏食なりに食欲が亢進し、結果食事摂取量が増えています。(摂取量が増えたことは、内服において大変助かりました。娘はヨーグルトかアイスクリームに混ぜてしか内服することができず、以前なら食べることを拒否されれば内服自体諦めることが多々ありましたが、エビリファイを始めてからはその苦労が激減しました。)
12日間エビリファイ内服後の医師の評価
12日間服薬後の判断材料とするために、日々の様子・行動・食事・排便(性状・回数)・睡眠(就寝時刻・起床時刻・昼寝時間・トータル睡眠時間・寝つき・中途覚醒・夜泣き)を記録し、医師に共有しました。
前述した幼稚園での様子を共有すると、幼稚園で以前より精神的に落ち着いて過ごせるようになったことで、「頭に指示が入りやすくなる」結果、「外部からの声かけや指示を受け取り、実行しやすくなる(指示が入りやすくなる)」ということでした。そして言葉も増えているということで、「とても良い傾向」という評価でした。
また「とにかく褒めてあげること」の重要性を伝えられました。「私たちはどうしても、子どもがやっていることを当たり前のように感じて褒めることをしなくなっていく傾向がある。とにかく褒めてあげて。褒めることは薬以上に効果があることなのよ」と。
便秘に関しては、モビコールと適宜ピコスルファートを使い、排便コントロールしていくよう伝えられました。
今後の見通し
薬の容量は変えずに継続(エビリファイ散1%0.05g)※1g中に10mgなので0.5mg
2ヶ月後に再評価となりました。
「ボーっとする」ことに関しては経過観察が必要とのことでした(どの程度の時間か、頻度など)。
また内服を継続する中で、様々な変化(チャレンジできたことやできるようになったこと等)を見つけてはその都度【褒める、共に喜ぶ】ことにも徹していきます。
保護者としての感想
医師の言う通り、「褒める」は最強の強化子だと思います。褒めると、娘の不適切行動が減る実感があります。誰でも、褒められるのは嬉しいし、自信になり、精神の安定につながります。
環境整備、声かけの工夫などは散々やってきましたが、悲しいことにそこには限界がありました。今回エビリファイを使ってみて、薬で脳内の神経伝達物質のバランスを調整し、精神状態を安定させることができるのであれば、使う意義は大きいと感じています。
エビリファイ内服を開始し、良い方向に向かっていると思うので、今後の変化が楽しみです。些細なことでも変化を見つけて楽しみ、娘と共に喜んでいきたいと思います。
幼稚園、療育などの社会生活で参加できることが増え、楽しいと思える瞬間が広がっていきますように。落ち着いて過ごす時間が増えることで、学びの機会が増え、「できた」を積み重ねて、自信とチャレンジする気持ちが育まれますように。生活全般の生きづらさが緩和されますように。心から願います。
まとめ
知的障がいありの自閉症娘3歳のエビリファイ服用について、開始に至るまでの経緯や、実際に12日間服用して感じた効果、副作用、服用しても変わらないこと、親として感じたことなどをまとめています。
実体験だからこそわかるリアルな情報を記載していますので、同じように悩む保護者の方々が少しでも安心やヒントを得られたら幸いです。
